シン・オール電化その2:再エネ電力の温熱利用——民生用の温熱革命とデンマーク半世紀の軌跡

5月25日号では「シン・オール電化」シリーズの初回号として、「なぜ直接電化が最優先なのか」を原理として論じた。電化しうる最終エネルギー用途が急拡大しているというEmberなどの「電化テック革命」の知見や、エクセルギーという概念などを掘り下げた。今号からその各論に入る。最初の主戦場は「温熱」だ。
飯田哲也(イイダテツナリ) 2026.06.01
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【本号の要旨】

本論では、世界最終エネルギー消費の約半分を占める「温熱」の脱炭素化を論じる。デンマークは1973年の石油危機を契機に、1979年の熱供給法によるコジェネ義務化・地域熱供給の制度整備、1985年の原子力拒否決議、1980年代の風力・バイオマス普及、そして2014年以降の「第4世代地域熱供給(4GDH)」への移行と風力P2H統合という、半世紀をかけた系統的な転換を実現してきた。FITの制度的源流もデンマークの風力協同組合と電力会社の買取協定(1980年代)にある。

技術的な肝は「往き・還りの温度差(ΔT)」だ。デンマークが目指す4GDH(往き55〜70℃・還り20〜30℃・ΔT30〜40℃)に対し、日本の地域冷暖房やボイラーなどの温熱利用ではΔT7〜10℃にとどまる。この差が、廃熱・低温熱源の活用可能性、潜熱回収装置の設置可否、そして風力余剰電力を熱に変換するP2H統合の効率を根本から左右する。デンマークの地域熱供給は電力系統の柔軟性リソースとしても機能し、温水蓄熱槽はリチウムイオン電池の100分の1のコストで系統調整を担う。

社会哲学的な差はさらに大きい。デンマーク・北欧では「温熱はユニバーサルサービス」として社会が設計する問題だが、日本には温熱政策が存在せず、暖房・給湯は自己責任に委ねられてきた。その結果、石炭→石油→ガス→電気という「ルールなき市場の荒野」が続いている。

奥の間「文明の燭洞幾」開幕号では、全体の趣旨や5つのテーマ軸を概説した上で、この「日本はなぜ変われないのか」という問いを文明論として掘り下げる。ホルムズ危機下で政府が「量は足りている・問題は流通の目詰まり」と繰り返す一方、丸紅元会長・国分文也氏は「代替調達は不可能、莫大な供給ソースが消えている」と指摘する。この乖離は、筆者の仮説である「観念が概念を圧殺する」という日本の統治の病理の現代的実例だ。1973年から50年、ナフサ輸入の中東依存構造は変わっていない。これから奥の間で問い続ける「日本が変わりうる条件」として、まずは科学技術リテラシーの欠如・形而上学的コミュニケーションの不在・政治文化の乗数効果という三つの欠如の解剖から始める。

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【本論】

世界の最終エネルギー消費の中で、温熱は最大級の用途であり、概数でほぼ半分を占める。電力そのものや交通よりも大きい。その温熱の大半を、私たちはいまだに化石燃料を燃やして作っている。ここに電化革命が波及し始めている。

デンマークはこの転換を、世界で最も早く、最も深く、最も体系的に成し遂げつつある国だ。しかしその転換は、突然始まったものではない。1973年の石油危機から半世紀をかけて積み上げてきた、制度・技術・文化の総体だ。今号の前半でデンマークの軌跡を論じ、後半で日本への示唆を導く。

第1節:1973年からの半世紀——デンマーク温熱革命の通史

石油危機という転換点

1973年10月、第四次中東戦争を契機としたOAPECの石油輸出禁止が発動された。当時のデンマークは、エネルギー消費の大半を輸入石油に依存しており、1972年時点では約9割超が石油だったとされる。暖房も給湯も調理も、石油なしには成り立たない社会だった。

石油危機はデンマーク社会に深刻な打撃を与えたが、同時により深い問いを突きつけた。「この依存から脱するにはどうすればいいか」。日本が「節約・備蓄・代替」という戦術的な応答に終わった一方で、デンマークは「エネルギー自立」という戦略的な転換を選んだ。

1976年、デンマーク政府は「エネルギー計画1976」を策定した。目標は三つ——エネルギー輸入依存の削減、燃料多様化、エネルギー効率の向上。この計画に基づいて、廃熱の活用・コジェネ(熱電併給)の統合・地域の再生可能エネルギー資源の活用という三本柱が打ち出された。

1979年:第1次熱供給法の制定

1979年の第1次熱供給法(Heat Supply Act)は、この計画に法的枠組みを与えた。この法律が日本との決定的な違いを生んだ。

法律の主要な目的は二つだった。第一に、デンマーク北海産の天然ガスを国内熱供給インフラに導入すること。第二に、大型火力発電所からの余剰熱・廃熱をCHPとして国内エネルギー供給に活用することだ。

法律は自治体に「ゾーニング(zoning)」を義務付けた。地域熱供給エリア・天然ガスエリア・個別暖房エリアを計画的に指定し、過剰投資を防ぎながら効率的なインフラを整備する仕組みだ。1981〜82年にかけて全国規模の熱計画が実施された。

この法的枠組みのもと、地域熱供給の普及率は1979年の約30%から1989年には約50%へと、わずか10年で20ポイント上昇した。数千台の石油ボイラーが撤去された。

さらに重要なのは1982年の措置だ。地域熱供給エリアおよび天然ガスエリア内での電気暖房が法律で禁止された(1982年、現在も有効)。自治体はインフラへの投資回収を保証された。「消費者の自由な選択」よりも「社会的最適」を優先するという明確な政策判断だ。

1980年代:コジェネ義務化と再生可能エネルギーの萌芽

1985年、デンマーク議会は原子力を国家エネルギーシステムから排除することを決議した。1979年のスリーマイル島事故、1980年代初頭の国内原子力論争を経た選択だった。これはエネルギー転換の方向を決定づけた——原子力ではなく、コジェネ+再生可能エネルギーという道だ。

ここで一つのエピソードを挟む。デンマークは1970年代後半、世界で初めて風力発電を商用電力系統に連系させた国でもある。石油危機の直後から国家プロジェクトとして風車の研究開発に着手し、リソー国立研究所(Risø)が技術的な基盤を整えた。

そして1980年代初頭、デンマークで生まれたもう一つの「制度的発明」が、今日の世界のエネルギー転換の源流となった。風力協同組合と電力会社と政府の三者協定による電力買取制度——これが固定価格買取制度(FIT)のルーツだ。農村の風力協同組合が小型風車を建設し、地域の電力会社がその電力を固定価格で買い取ることを取り決めた。価格は発電コストを補償し、長期安定収入を保証するよう設定された。この仕組みが、市民や農家による風力投資を可能にした。

この「デンマーク方式」は1980年代末にドイツに渡り、1990年の「電力供給法(Stromeinspeisungsgesetz)」として法制化された。さらに2000年の「再生可能エネルギー法(EEG)」へと発展し、太陽光・風力の買取価格が法定されるFIT制度の国際標準モデルとなった。日本の2012年FIT制度もこの系譜にある。デンマークの農家と協同組合が1980年代初頭に結んだ一枚の協定が、今日の世界の風力・太陽光の爆発的普及の制度的源流だ。

1980年代を通じて、分散型の小中規模コジェネプラントが全国に整備された。都市部の大型プラントではなく、地方の小都市・農村コミュニティに適した「裸地(bare field)プラント」が建設され、天然ガスを燃料とする分散型コジェネが普及した。

同時期、バイオマスとバイオガスの利用が本格化した。バイオマス協定が採択され、2000年までの野心的な導入目標が設定された。農業廃棄物・廃材・廃棄物由来の熱が地域熱供給ネットワークに統合されていった。

風力発電の普及も1980年代から始まった。デンマークは1970年代後半から風力発電の研究開発に国家投資を続け、Vestas・Siemens Gamesa(旧Bonus Energy)という世界的な風車メーカーを育てた。1991年には世界初の洋上風力発電所「Vindeby」が稼働した。

1990年代〜2000年代:バイオマス・太陽熱・風力の統合

1997年、デンマークはエネルギー自給を達成した。北海油田・天然ガスの生産と、再生可能エネルギーの普及が組み合わさった結果だ。ただし、この自給は北海資源の生産に支えられた面も大きく、2010年代以降は再び純輸入側に戻っている。

2000年代に入ると、地域熱供給の燃料構成が大きく変わり始めた。バイオマス、廃棄物、産業廃熱、太陽熱、ヒートポンプなどの比率が高まり、石炭・石油・天然ガスの比率は1970年代から劇的に低下した。重要なのは、燃料を単純に置き換えたことではない。コジェネ、廃熱、再エネ熱源を地域熱供給ネットワークの中に段階的に統合したことである。

大規模な太陽熱集熱器フィールドの建設も進んだ。デンマークは、太陽熱を地域熱供給に組み込む世界有数の先進国であり、世界最大級の太陽熱地域熱供給設備もデンマークにある。

2014年:「第4世代地域熱供給(4GDH)」の登場

ここで一つの知的な転換点がある。2014年、オールボー大学のHenrik Lund教授らが学術誌「Energy」に発表した論文が、「第4世代地域熱供給(4th Generation District Heating・4GDH)」という概念を定義した。

4GDHとは「スマート熱グリッドを通じて持続可能なエネルギーシステムの発展を支援する、技術・制度上の統合的コンセプト」と定義される。4GDHシステムは、省エネ建築への熱供給をグリッドロスを最小化しながら行い、低温熱源の利用とスマートエネルギーシステムの運用を統合する。

地域熱供給の世代を整理しておこう。

State of Green「地域熱供給白書〜都市部のためのグリーンな冷暖房」より

State of Green「地域熱供給白書〜都市部のためのグリーンな冷暖房」より

第1世代(1880〜1930年代):蒸気による熱供給。温度は200℃超。コペンハーゲンなど大都市の初期インフラ。

第2世代(1930〜1970年代):高温温水(100℃超)による熱供給。大型中央プラントによる集中型。石油・石炭火力のCHP。

第3世代(1970〜現在):低温温水(80〜100℃)による熱供給。天然ガスCHP・コジェネの普及期。現在の日本の地域冷暖房もこの世代にあたる。

第4世代(2010年代に概念化):低温・超低温温水(おおむね40〜70℃)による熱供給。ヒートポンプ・太陽熱・廃熱・風力電力との統合。スマートサーマルグリッド。

4GDHの設計で押さえるべきは「供給温度の引き下げ」と「還り温度の引き下げ」だ。前号で論じたように、ヒートポンプのCOPは供給温度が低いほど高くなる。4GDHが描く将来像では、往き温度50〜60℃台、還り温度20〜30℃台、場合によっては往き55℃・戻り20℃級の超低温運転が目標になる。これは従来の第3世代(往き80〜100℃・戻り60℃前後)と比べて大幅な低温化だ。

低温化によって何が可能になるか。工場廃熱・データセンター廃熱・スーパーマーケットの冷凍廃熱・下水処理場の廃熱——これまで「低品質すぎて使えなかった」40〜50℃程度の廃熱が、4GDHネットワークに統合できるようになる。都市の廃熱が、都市の暖房に使われる。

2020年代:風力発電と地域熱供給の統合

現在、デンマークはさらなる転換を進めている。風力発電と地域熱供給の統合——「Power-to-Heat(P2H)」だ。

デンマークでは、風力発電だけで年間電力需要の50%台前半(約53〜54%)を安定して賄う状況が常態化している。国内総発電量に占めるシェアで見ると、2025年の風力19.1TWh=56.6%、太陽光4.49TWh=13.3%、VRE合計23.6TWh=国内総発電量の約70%。ただし輸入を含む国内電力供給比では約58%。さらに風況のよい夜間・週末には、風力だけで国内需要を上回る時間帯があり、2015年7月には需要比116%、深夜には140%を超えた例も報じられている。これはデンマークが孤立系統として風力だけで常時100%運用しているという意味ではない。ドイツ・ノルウェー・スウェーデンなどとの国際連系線を通じて余剰を輸出し、不足時には輸入する、開かれた北欧・欧州電力市場の中で成り立っている。この余剰電力を、地域熱供給ネットワークに接続した大型ヒートポンプや電気ボイラーで熱に変換して貯蔵する——これがP2Hの仕組みだ。

コペンハーゲンとオーフスでは大型熱ポンプによる地域熱供給ネットワークの電化が進んでおり、デンマークの風力主体グリッドのバランス調整サービスを提供している。

具体的なプロジェクトを見ると、オールボーでは100〜175MWの海水熱ポンプが2025年までにオールボー市の地域熱供給の25%を供給する計画だ。コペンハーゲンのHOFORは風力発電からの再生可能電力を活用しながらバイオマスと化石燃料への依存を減らすため、熱ポンプへの大規模投資を計画している。

エスビャウのDIN Forsyningでは、北海の海水を熱源とする50MW海水熱ポンプ(COP 3.65)が稼働しており、年間約28万MWhの熱を供給している。CO2冷媒を使用し、電力系統の高速バランス調整も可能にする設計だ。

このシステムは「風力発電の時間間・日間貯蔵」として機能し、大型蓄熱槽やピット蓄熱と組み合わせれば、より長い時間軸の熱貯蔵にもつながる。電気では貯蔵コストが高い余剰電力を、熱として地域の断熱された建物や蓄熱槽に「貯める」。電力系統と熱供給ネットワークが統合されたスマートエネルギーシステムが、デンマークでは実用化されている。

この統合こそが、筆者(飯田)が「日本に第4世代地域熱供給を」と訴え続けてきた内容の具体的な姿だ。

第2節:デンマーク50年の転換が示す5つの原則

半世紀のデンマークの軌跡から、何を学べるか。5つの原則を抽出する。

原則①:危機を戦略に変えた

1973年の石油危機に対して、デンマークは「節約・備蓄」という戦術でなく「エネルギー自立」という戦略で応じた。ホルムズ危機という現在進行形の危機の前で、日本はどちらの応答をしているか。

原則②:法的枠組みが技術普及を可能にした

地域熱供給とコジェネが普及したのは、技術が優れていたからだけではない。1979年の熱供給法・自治体熱計画・ゾーニング計画という制度的枠組みが先行して整備されたからだ。その上に、近年は大型ヒートポンプや電気ボイラーによるP2Hが重なっている。「良い技術が市場で自然に普及する」という観念に対して、「制度が市場を設計する」という概念の勝利だ。

原則③:コジェネ・廃熱・再エネの統合を段階的に積み上げた

石油→天然ガスCHP→バイオマス・太陽熱→風力P2H という移行は、一度に起きたのではなく、各10〜20年をかけて段階的に積み上げられた。「完璧なシステムを一気に導入する」のではなく「今できることから始めてシステムを育てる」という設計思想だ。

原則④:供給温度を下げ続けた

第1世代(蒸気・200℃超)→第2世代(高温水・100℃超)→第3世代(温水・おおむね80〜100℃)→第4世代(低温・超低温水・40〜70℃)という長期的な温度低下は、技術進歩と建物断熱強化の両輪によって実現してきた。温度を下げることがCOP向上・低温廃熱活用・再エネ熱源統合を可能にした。

原則⑤:自治体・協同組合・市民が運営主体になった

デンマークの地域熱供給の約60%は消費者所有の協同組合・地方自治体が運営する非営利事業体だ。利益最大化でなく熱料金最小化が目標だ。これは「公共財としての熱」という政治哲学から来ている。「電力は誰のものか」という問いの熱供給版だ。

第3節:ΔT(往き・還りの温度差)という設計の要石

デンマークと日本を比較するとき、最も重要な技術的指標が「往き・還りの温度差(ΔT)」だ。

地域熱供給ネットワークは、熱を建物に「往き管」で届け、冷えた水を「還り管」で回収する循環システムだ。往き温度が高く還り温度も高い——つまりΔTが小さい——と、同じ熱量を送るために大量の湯水を循環させなければならない。逆に、往き温度を下げ還り温度も十分に下がれば、ΔTが大きくなり、少ない流量で多くの熱を輸送できる。

現在のシステムを比較すると、設計思想の差が際立つ。

```

【往き・還り温度差(ΔT)の比較】

デンマーク第4世代(4GDH)目標:

往き 50〜60℃ / 還り 20〜30℃

ΔT = 30〜40℃

デンマーク現行第3世代:

往き 70〜80℃ / 還り 40〜50℃

ΔT = 25〜35℃

日本の従来型地域冷暖房(第3世代相当の代表例):

往き 80〜100℃ / 還り 70〜80℃

ΔT = 7〜10℃

```

日本のΔTが小さい(7〜10℃)ということは、同じ熱量を輸送するために、ΔTが25〜35℃のシステムに比べて、おおむね3倍前後、条件によっては4倍超の流量が必要になるということだ。ポンプ動力が増え、配管径・熱交換器・ポンプなどの設備が大きくなりやすい。熱損失そのものは主に温度水準と配管条件で決まるが、大流量・高温設計はインフラコストと運用コストの両方に響く。

さらに重要なのが、ΔTと廃熱・低温熱源の活用可能性の関係だ。

還り温度が60〜70℃(日本)の場合、ネットワークに熱を「供給できる熱源」は70℃以上の温度を持つものに限られる。一方、還り温度が20〜30℃(デンマーク4GDH目標)なら、30〜40℃程度の低温廃熱——スーパーマーケットの冷凍廃熱、データセンターの排熱、下水処理場の廃熱——をネットワークに統合できる。都市の「ゴミ熱」が、都市の「暖房資源」になる。

さらに見落とされがちな効果がある。還り温度が低いと、燃焼排気ガスに含まれる水蒸気の「潜熱」を回収できる。

燃料(バイオマス・天然ガス・バイオガス)を燃焼させると、排気ガスには大量の水蒸気が含まれる。この水蒸気が凝縮して水に戻るとき、大量の熱(潜熱)が放出される。水の蒸発潜熱は約2,260 kJ/kgと大きく、燃料の低位発熱量の10〜15%相当のエネルギーが排気中の水蒸気として「捨てられている」。

この潜熱を回収するには、還り管の水温が排気ガスの露点(天然ガスで約57℃、バイオマスで50〜55℃)より低くなければならない。還り温度が60〜70℃(日本の地域冷暖房)では露点を下回らないため、水蒸気は凝縮せず、潜熱はそのまま煙突から逃げる。還り温度が20〜30℃(デンマーク4GDH目標)なら、水蒸気は確実に凝縮し、潜熱を丸ごと回収できる。

この仕組みは日本でも「エコジョーズ」として広く知られている。家庭用ガス給湯器に潜熱回収熱交換器を搭載し、給湯効率を従来の80%から95%以上に引き上げた技術だ。エコジョーズが機能するのは、給水(還り相当)温度が低い(水道水・約15〜20℃)からだ。

デンマークなどの低温地域熱供給では、この潜熱回収装置(コンデンシング・フルーガス・ヒートエクスチェンジャー)が重要な技術要素になっており、燃料効率を大幅に向上させている。還り温度が低いネットワークと組み合わせることで、バイオマスやガスの熱エネルギーを最大限に引き出す設計だ。

翻って日本のバイオマスボイラー——学校・病院・地域施設など全国に導入が進んでいる——では、潜熱回収装置が標準的な設計要素になっているとは言いがたい。理由の一つは明快で、接続先の温水系統の還り温度が高すぎると、潜熱回収の効果が出にくいからだ。設備投資の機会が、還り温度の設計一つで失われている。

この差を生む根本にあるのは、建物の断熱性能だ。

断熱性能が高い建物は、室内を20℃に保つために必要な「熱の流量」が少ない。少ない流量で済むなら、往き温度を下げても十分に暖められる。さらに重要なのは「還り温度」だ。建物が熱を効率よく吸収(床暖房・輻射暖房)し、還り管に戻る湯水を十分に冷やしてくれれば、ΔTが大きくなる。

床暖房の往き温度は30〜40℃、温水ラジエーターは50〜70℃、温風ファンコイルは50〜60℃——建物側の暖房端末が低温で機能するほど、往き温度を下げられ、還り温度も下がり、ΔTが拡大する。デンマークが4GDHで追求している「往き55℃・還り20℃(ΔT35℃)」級の目標は、高断熱住宅に低温放熱器(床暖房・輻射パネル等)が普及してはじめて成立する設計だ。

ここにカルノー効率の論理が重なる。

往き温度を90℃から60℃に下げるだけで、熱ポンプの理論上限COPが4.5から6.7へと約50%向上する。実機ではその40〜60%程度だが、効率差は積み重なる。年間の電力消費・CO2排出・コストのすべてに響く。

デンマーク4GDHが追求している「往き55℃・還り20℃」という設計は、往き温度の低さとΔTの大きさの両方を同時に達成する。熱ポンプのCOPを最大化しつつ、少ない流量で都市全体に熱を届け、低温廃熱を資源として活用する——この三つを一つの設計思想で実現する。

断熱と低温熱供給は、切り離せない一体の設計思想だ。デンマークが1970年代から建物断熱規制を強化し続けてきたのは、熱供給を高効率化するという設計思想と一体だったからだ。

日本の住宅断熱性能は、先進国の中で遅れが指摘されてきた。HEAT20(住宅の高断熱化・高品位な省エネルギー基準)の議論は近年ようやく進んできたが、すべての新築建築物に省エネ基準適合が義務づけられたのは2025年4月からである。デンマークが1970年代から取り組んできた断熱・熱供給の一体改革を、日本は半世紀遅れで始めたことになる。そしてΔTが小さく・往き温度が高い現在の地域冷暖房やボイラー設計のままでは、4GDHへの進化経路が制度的にも技術的にも閉じたままになる。

第4節:温熱政策を巡る社会哲学の落差——ユニバーサルサービスか、自己責任か

デンマークと日本の差は、地域熱供給のシステム設計の差だけではない。その根底にある温熱への哲学の差が横たわる。

デンマーク:温熱はユニバーサルサービスである

デンマークをはじめ北欧諸国には、暖房・給湯などの温熱は「人の暮らしに必須なユニバーサルサービス」だというコンセンサスがある。社会哲学と言っても良いだろう。厳しい冬の気候の中で、暖かく過ごせることは生存の条件であり、社会が保障すべき権利だ。

だからこそ、「どのエネルギーで・いくらで・どれだけ環境に優しく暖かさを届けるか」は、個人の自己責任でなく社会的な設計の問題として扱われてきた。1979年の熱供給法はその制度的表れだ。自治体がゾーニングを義務付けられ、コジェネの廃熱を無駄にしないよう法律で定め、電気暖房を禁止して効率的な熱供給を誘導した。消費者の「自由な選択」より「社会的最適」を優先するという価値判断だ。

この発想の根底には、エクセルギーの哲学がある。前号で論じた通り、電気は「5000℃相当」の最高品質エネルギーだ。それを20〜40℃の暖房に直接使う(電気抵抗ヒーターで暖める)のは、「電気ノコギリでバターを切る」とたとえられるとおり、質の高いエネルギーで質の低い用途を賄うという意味で「もったいない」。だからヒートポンプで大気の熱をくみ上げ、廃熱を回収し、できるだけ低い品質のエネルギーで暖房する——これが「エクセルギーを無駄にしない」という設計思想だ。地域熱供給の低温化(第4世代への移行)は、この哲学の制度的実装なのである。

日本:温熱政策の不在

他方、日本には「温熱政策」がそもそも存在しない。

暖房・給湯は個人の自己責任に任されてきた。「どう暖まるかは各自の問題」という発想だ。その結果、日本の住宅は先進国最低水準の断熱性能を持つことになった。隙間だらけの木造住宅が標準であり、冬は「着込んで耐える」文化が根付いた。

暖房の歴史を見ると、明治〜昭和初期の石炭ストーブが戦後に石油ストーブへ変わり、都市ガスが普及するとガスファンヒーターが入り、1990年代以降に「オール電化住宅」で電気エアコン・電気給湯が広まった。その変化を貫く一本の軸は「市場の選択」だ。安いエネルギーが普及し、新しい機器が普及し、どのエネルギーで暖まるかについて社会的な設計がなかった。ルールなき市場の荒野、と言っていい。

日本に地域冷暖房が存在しないわけではない。1970年代から大型再開発プロジェクト(新宿・汐留・幕張・みなとみらいなど)で整備されてきた。2023年時点で全国約160のシステムが稼働している。しかしこれらは「省エネ・環境配慮の付加価値施設」として整備されたものであり、「人の暮らしに必須なユニバーサルサービス」という発想から生まれたものではない。

技術的な問題も重なっている。日本の地域冷暖房は往き80〜90℃の高温供給が標準で、第4世代化(40〜70℃への低温化)が進んでいない。廃熱統合・ヒートポンプ統合が進まない最大の障壁だ。個々の再開発プロジェクト単位で設計され、都市全体のスマートサーマルグリッドへの進化経路が描かれていない。

デンマークは1979年に「エネルギー自立・温熱はユニバーサルサービス」という明確な概念から熱供給法を制定した。日本は2020年代においても「温熱は自己責任」という観念から抜け出せていない。この差は、技術の差でも資源の差でもなく、温熱に対する社会的哲学の差だ。

第5節:ガス・灯油——燃焼式機器の見えていなかったリスク

地域熱供給の話から一歩引いて、個別の民生熱に戻る。

2024年のScience Advances論文などが、ガスコンロの屋内空気汚染リスクを改めて明確にした。とくに問題となるのは二酸化窒素(NO2)で、調理後も居室や寝室に広がり、WHOなどの健康基準を超える時間帯が生じうる。小児喘息・呼吸器疾患との関連を示す疫学研究も蓄積されている。

この議論は米国では、新築建物への天然ガス接続や化石燃料機器の規制をめぐる政治的論争になった。ニューヨーク州や一部自治体では新築建物の化石燃料利用を制限する方向に進む一方、連邦レベルや州レベルでは強い反発もある。

そして、調理以上に日本に固有の死角があるのが、冬の暖房だ。

日本の家庭でいまも広く使われている開放型の石油ストーブ/ファンヒーターとガスストーブ/ファンヒーターとは、室内の空気で灯油を燃やし、燃焼ガスをそのまま部屋に戻す構造だ(排気を屋外へ出すFF式とは違う)。二酸化窒素(NO2)・一酸化炭素(CO)・微小粒子状物質・ホルムアルデヒド、そして大量の水蒸気を、暖まろうとしているまさにその居室・寝室に放出している。

東京都の商品テストでは、開放式の石油・ガスファンヒーターを使うと、室内のNO2濃度は使用開始から15分ほどで短期曝露の指針値(0.1〜0.2ppm)を超え、0.3〜0.4ppmに達した。指針値内に戻すには換気回数を大きく増やす必要があるが、その場合は燃料消費がほぼ倍になる。窓を1時間に2分開ける程度では、数分で元の濃度に戻ってしまう。「暖かさ」と「きれいな空気」が、開放型燃焼暖房ではトレードオフになっている。

COのリスクはさらに直接的だ。換気を怠れば酸素が減って不完全燃焼を起こし、無色無臭のCOが出る。だからメーカーは「1時間に1〜2回の換気」を警告し、2011年4月以降の石油ファンヒーターには不完全燃焼防止装置の搭載が義務づけられた。裏返せば、開放型燃焼暖房は構造的に室内空気を汚す前提で、それを換気と安全装置で抑え込んでいる、ということだ。ガスコンロが「調理という短時間の燃焼」なら、石油ストーブ・ファンヒーターは「暖房という長時間の燃焼」を、人が最も長く過ごす居室・寝室で行う。開放型燃焼暖房を主暖房に据える先進国は、いまや日本くらいだ。

日本では、調理についても暖房についても、この議論がほぼ存在しない。「IHよりガスが美味しい」という観念が根強く、屋内空気汚染という概念が政策議論に入っていない。「ガスの青い炎」や「石油ストーブの暖かさ」が持つ文化的・感情的な価値は本物だ(5月25日号喫茶去でも触れた)。だが「美味しさ・暖かさ」と「健康リスク」を並べて比較する議論が日本に欠けている。

ヒートポンプ暖房やIH調理は、室内で炎を持たず、何も燃やさない。だから、ここで挙げた室内排ガスがそもそも発生しない。

シン・オール電化は、「ガスや灯油より電気が良い」という価値判断を押しつけるものではない。「電化することで何が得られ何が失われるか」を概念として正確に比較する能力を持つことから始まる。

第6節:日本の政策的アンバランス——市場で普及したヒートポンプと、熱電化戦略の欠落

ここで注意すべきことがある。日本は、米国や英国のように「ヒートポンプそのものの普及が大きく遅れた国」ではない。むしろ、空調用エアコンという形では、ヒートポンプは日本のほとんどの住宅・建築物に広く深く入り込んでいる。家庭用エアコンは、いまや冷房だけでなく暖房機器でもあり、日本の住宅設備の標準部品になっている。

給湯についても同じだ。CO2冷媒ヒートポンプ給湯機、いわゆるエコキュートは、2000年代以降、電力会社のオール電化戦略と結びついて普及してきた。日本は、ヒートポンプ機器を「使っていない国」ではない。むしろ、空調と給湯という民生熱の中核領域で、世界的に見ても早い段階からヒートポンプを大量普及させた国である。

問題は、普及しているにもかかわらず、それが政策概念として整理されていないことだ。

日本のエアコン普及は、暑熱・湿気・住宅事情・家電メーカーの技術開発・消費者市場の選択によって進んだ。エコキュートの普及は、深夜電力・オール電化・電力会社の販売戦略・住宅設備市場によって進んだ。いずれも、エクセルギー効率を踏まえて「低温熱需要はヒートポンプで賄うべきだ」という国家的な温熱政策から生まれたものではない。

ここに、日本の逆説的な実態がある。技術はある。市場もある。機器も普及している。しかし、それらを「化石燃料依存を減らす熱電化戦略」「再エネ大量導入時代の柔軟性資源」「地域熱供給・建物断熱・蓄熱と統合されたスマートエネルギーシステム」として束ねる政策概念が存在しない。

つまり、日本の問題は「ヒートポンプへの無関心」ではない。より正確には、市場普及したヒートポンプを、脱炭素・エネルギー安全保障・再エネ統合の中核政策として位置づけ直せていないことだ。

米国IRA・欧州REPowerEUとの比較:

米国IRA(インフレ削減法)の住宅電化支援では、暖房用ヒートポンプ、ヒートポンプ給湯機、電気パネル改修、断熱改修などが、一体の「家庭の電化・高効率化」パッケージとして設計されている。欧州REPowerEUでも、ヒートポンプはロシア産化石燃料からの脱却、すなわちエネルギー安全保障の手段として位置づけられた。

これに対して日本では、エコキュート補助、断熱改修補助、住宅省エネ補助、GX支援、再エネ導入支援が、それぞれ別々の制度として存在する。個別制度としては意味があるが、「化石燃料による低温熱需要を、断熱・ヒートポンプ・再エネ・蓄熱で置き換える」という大きな戦略に束ねられていない。

さらに、日本では燃料源ごとにエネルギー事業者が分かれている。電力会社、都市ガス会社、LPガス会社、石油販売事業者が、それぞれ別の市場・設備・顧客基盤を持つ。このため、ヒートポンプ支援はしばしば「電力会社支援」と受け止められ、ガス会社・石油系事業者からの反発を招きやすい。ここに、日本の業界構造の歪みがある。

本来、ヒートポンプは「電力会社の機器」ではない。大気熱・地中熱・排熱などの低温熱をくみ上げる、熱利用の基盤技術である。再エネ電力と組み合わせれば、化石燃料を燃やして20〜60℃の低温熱をつくる必要を大幅に減らせる。にもかかわらず、日本の政策議論では、ヒートポンプが「電気 vs ガス」の業界対立に閉じ込められ、エクセルギー合理性やエネルギー安全保障の概念にまで引き上げられていない。

GX政策の非対称性:

2023年から始まったGX移行債の使途を見ると、水素・アンモニア・CCS・原子力・大規模産業技術には大きな政策資源が向かう一方で、既に実用化され、大量普及可能で、民生熱の化石燃料依存を直ちに下げられるヒートポンプ・断熱・蓄熱・低温熱網への戦略的位置づけは弱い。

これは「技術がないから遅れている」のではない。むしろ逆だ。日本には高性能なエアコン、エコキュート、冷凍空調メーカー、制御技術、住宅設備市場がある。それにもかかわらず、それらを「熱の脱炭素インフラ」として統合する政策設計がなく、それを支える政策哲学や政策思想がないのだ。

すなわち、日本はヒートポンプに無関心だったのではない。家電市場と電力会社の販売戦略によって、ヒートポンプはすでに広く普及している。しかし、それは「市場の勝手な普及」であって、エクセルギー、断熱、再エネ統合、蓄熱、地域熱供給を貫く国家的な温熱政策ではなかった。このアンバランスこそが、日本の温熱転換を遅らせている。

第7節:シン・オール電化の設計原理——何が変わったのか

最後に、「オール電化」と「シン・オール電化」の違いを整理しておく。

旧来の「オール電化」(1990〜2000年代):

- 主体:電力会社(売る側)が販売戦略として推進

- 目的:深夜電力需要の創出・ガス会社との競合

- 電源:原子力を含む低稼働率電源の夜間利用(「オール電化プラン」の深夜割引)

- 価値観:電力販売量の増加

シン・オール電化(2020年代〜):

- 主体:地域・家庭・産業(使う側が生産者にもなるプロシューマー)

- 目的:化石燃料依存からの自立・エネルギーコストの低減・安全保障

- 電源:再エネ(太陽光・風力)+蓄電池+系統の三位一体

- 価値観:エクセルギーの最大活用・エネルギーの民主化

この転換の象徴がプロシューマーだ。屋根に太陽光を乗せ、蓄電池を持ち、ヒートポンプで暖め、EVをV2H接続する家庭は、電力の消費者であると同時に生産者であり、系統安定化のリソースでもある。

デンマークが50年をかけて積み上げてきた「熱のコミュニティ」——地域熱供給の協同組合・コジェネの地産地消・風力P2Hの統合——は、この「シン・オール電化」の先進的な実装形態だ。

日本はまだその入口に立っていない。しかし入口は見えている。断熱改修・ヒートポンプ普及・第4世代地域熱供給の設計・風力P2Hの統合——一つひとつは技術的に確立された手段だ。欠けているのは技術でなく、制度的枠組みと政策の優先順位だ。

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参考文献

本論で引用・参照した文献の一覧は、別ページ(Google Doc)にまとめています。

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喫茶去|北欧という贈り物

—— 「喫茶去(きっさこ)」——禅語で「まあお茶でも一杯」。本論で固くなった頭へのコーヒーブレイク。エネルギーの話も、無関係な話も、気の向くままに。

1990年代のほとんどを過ごした北欧、スウェーデンとデンマークは、いま振り返ると、自分の人生への最高の贈り物であった。

大学・大学院で原子力を学び、その産業に勤めた筆者は、それまで原子力の世界を内側から見てきた。当時の日本では、エネルギー政策といえば原子力が中心にあった。国や電力会社の内部を垣間見る機会も得た筆者は、その閉じた構造をいつしか「原子力ムラ」と心の中で呼ぶようになった——専門家・官僚・産業が密に結びつき、外の風が入らない共同体。しかも誰が責任者かが分からず、空気で物事が決まってゆく。自分が幼少期を過ごした村社会そのものだと思ったからだ。

その原子力ムラを抜け、さらに日本をも出て飛び込んだ北欧で目にしたものは、その対極の社会だった。

デンマークの農村では、農家が自分たちで風車を立て、協同組合で電力を売り、地域の熱供給を民主的に運営していた。難しい技術の話ではなく、暮らしの話だった。エネルギーは誰かに管理してもらうものではなく、自分たちで設計するものだという感覚が、社会の土台に埋め込まれていた。電力の半分を原子力で賄っていたスウェーデンでも、地域では自然エネルギーによる自立の動きが始まっていた。30年も前の北欧で、すでに自然エネルギー革命の萌芽が、日常の中で静かに育っていた。

北欧では、人生の師と仰ぐ教授と出会った。冬の夜、冷え込むコペンハーゲンの港で、マルメ(スウェーデン)からのフェリーを降りた筆者を和やかに出迎えてくれた師の姿が、今も心に焼き付いている。その後の師との親交と厚情、それ以上に生きる姿勢と哲学、その言葉一つひとつが、自分の中に積もり、結晶となっていった。スウェーデンとデンマークのそれぞれで、当時の筆者と同じ30歳そこそこの若者と知り合った。その後、幾多の冒険をともにし、それぞれの波瀾万丈の人生を交差させながら時を積み重ねて、生涯の友となった。

その頃、ふと言葉が浮かんだ。「エネルギーデモクラシー」。エネルギーを民主主義の問題として捉える——この言葉が心の中で凝縮したのが、あの時期だった。以来ずっと、この言葉を使い続けている。30年を経て、彼らが育ててきた社会は、本論で論じたような地域熱供給と風力統合の実装へと辿り着いた。

この連休も、北欧から戻ったばかりだ。

***

この連載は、新著『Ei革命』の"要約"ではありません。出版後に古くなる議論ではなく、出版後に加速する現実を追いかけるためのニュースレターです。

奥の間「文明の燭洞幾」|6月中は無料開放

「燭」はろうそくで暗闇の一点を照らし出すこと。「洞」は穴を貫いて深層を見通すこと。「幾」は『易経』の語で、変化の極めて微かな萌芽——肉眼には見えない転換の兆しを指します。「萌芽を照らし出し、深く貫いて読む」という知的営みを、この場でともに続けていきたいと思っています。

本論(広場)が「何が起きているか(What)」を論じる場だとすれば、奥の間は「なぜそうなのか(Why deeper)」を掘り下げる場です。エネルギー・文明・政治・AI・歴史——これらを縦横に使いながら、現在進行形の転換の深層を透視していきます。

今号は開幕号として、この連載がこれから照準を合わせようとしている射程の全体像をお見せします。

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